農地転用の「届出」と「許可」は何が違うの?農地転用の専門家が解説!


農地転用をしようと考えているけど、「届出」と「許可(申請)」って何が違うんだろう?
調べてみてもややこしくて良く分からない…

西野
結論から申し上げますと、「届出」か「許可(申請)」かは、転用予定地の都市計画区分により決まります。
農地転用を行う際は、都市計画区分を含め、様々な事項を事前に調査しておく必要があります。
この事前調査がキモです。
本コラムでは、農地転用と都市計画区分の関係性を解説し、「届出」と「許可」の違いを解説します!
ぜひ最後までご覧ください。
本コラムで分かること
- 農地転用の「届出」と「許可(申請)」の違い
- 農地法3条・4条・5条の違い
- 農地転用の受付窓口と審査期間
- 農地転用を行う際のチェック項目
転用予定地の都市計画区域で「届出」or「許可」が決まる!

このパートでは、農地転用における「届出」と「許可(申請)」の違いが何で決まるのか解説します。
ポイントは転用予定地の「都市計画区分」です。それでは見ていきましょう!
市街化区域:届出、市街化区域:許可(申請)の手続きが必要
農地を駐車場や住宅用地などに転用する場合、「届出で済むのか」「許可が必要なのか」は最も気になるポイントです。
結論からいえば、市街化区域内での農地転用は届出、その他の区域(市街化調整区域・非線引区域・都市計画区域外)は許可が原則です。
なぜ市街化区域は届出で済むのか?
市街化区域は「計画的に市街地化を進める区域」として定められているため、農地を宅地や商業用地に転用することが政策的に認められているからです。
一方で、市街化調整区域や農用地区域などは「農地を守るべき区域」とされており、農業以外の利用には厳格な審査(許可)が課されます。
↓分かりやすく表でまとめてみました↓
項目 | 届出 | 許可 |
都市計画区域 | 市外化区域 | 市外化調整区域 他 |
案件締め日 | いつでも届出可 | 毎月15日or20日(市町ごとに異なる) |
審査 | 形式審査 | 実質審査(立地基準・一般基準) |
期間 | 1週間~2週間程度 | 申請した月の翌月の月末 |
費用 | 届出自体は無料(別途実費が掛かる) | 申請自体は無料(別途実費が掛かる) |
不許可の可能性 | ― | 場合によっては不許可になることも |
「届出」と「許可」の窓口・審査の違いと期間の目安
農地転用の「届出」か「許可(申請)」のどちらかが必要かは、都市計画区分で決まることは前パートで確認しましたが、ここでは受付窓口と審査期間について解説します(前パートの表も参考にしてください!)。
- 届出(市街化区域内)
農業委員会に「農地転用届出書」を提出。通常は2週間前後で受理されます。 - 許可(市街化調整区域、非線引区域など)
都道府県知事(実際は農業委員会が窓口)の「農地転用許可申請」。審査には1〜2か月程度かかり、農業上の支障がないかを重点的にチェックされます。
届出は“事務手続き”であるのに対し、許可は“審査を経る行政処分”という大きな違いがあります。
したがって、「届出」は受理してもらえないということは絶対にありませんが、「許可」は申請後に不許可処分とされる場合があります。
自分で申請するのが不安な方は、専門家に相談することをお勧めします。
農地法第3条/第4条/第5条の違いと“あなたのケース”は?

農地転用の「届出」や「許可(申請)」は、主に3条・4条・5条に基づいて行うことになります。
このパートでは3条・4条・5条のどれに基づいて「届出」or「申請」を行うべきかを解説します。
ポイントは、「権利移転」と「転用後の土地の使用者」です。
この2軸が非常に重要です。
3条:権利移動のみ/4条:自分で転用(自己転用)/5条:転用後、他人が使用
農地法では以下の条文ごとに手続きが分かれます。
- 3条許可:農地を農地のまま売買・賃貸する場合(農地→農地)。例:隣接農家へ農地として売る。
- 4条許可(または届出):自分の農地を転用(農地以外に)する場合。例:自分の田んぼを駐車場にする。
- 5条許可(または届出):農地を売買・賃貸して、相手が転用する場合。例:農地を不動産業者へ売って住宅用地にする。
つまり、土地が農地のまま、所有者だけが変わる(権利移転)場合、3条です。
そして、土地を農地以外にする(転用)場合で、転用を自分で行う場合は4条、他人が行う場合は5条ということです。
要するに、「誰が転用するか」「権利移動を伴うか」で、3条・4条・5条が切り分けられる仕組みです。
市街化区域内の“届出”でOKな4条・5条の具体例
例えば以下のようなケースでは「届出」で済みます。
- 市街化区域の農地を自分で住宅用地にする(4条届出)
- 市街化区域の農地を自分で駐車場にする(4条届出)
- 市街化区域の農地を不動産会社へ売って宅地開発する(5条届出)。
- 市街化区域の農地を建設会社へ賃貸し、建設会社が資材置き場に転用する(5条届出)
- 市街化区域の農地を再エネ事業社へ売却し、再エネ事業が太陽光発電や蓄電池設置のために転用(5条届出)
一方で、市街化調整区域の農地を同じように使おうとすると「許可」が必須です。
「許可」となると、「届出」と比べてハードルが上がり、転用に着手するまでに多大な時間を要することもあります。
農地転用を行う際のチェックポイント

このパートでは、実際に農地転用を行う場合のチェック事項を解説します。
繰り返しになりますが、農地転用は事前調査がキモです。
事前調査を怠ると、多大な損害を被る可能性があります。ご注意ください!
チェック事項①:都市計画区分
転用予定地が「市街化区域」か「市街化調整区域など」かによって必要な手続きが異なる、というのは既に解説済みです。
ここでは、どうやって都市計画区分を確認するかを解説します。
転用予定地の都市計画区分は主に以下の方法で確認します。
- 役所の都市計画課で都市計画図を確認する
- オンライン地図サービスで都市計画区分を確認する
都市計画図は役所にいけば、数百円で購入することが可能です。
「届出」or「許可」の際に位置図を添付する必要があるので、この段階でついでに購入しておくのが良いでしょう。
また、オンライン地図サービスは公開している市町と公開していない市町があるので、注意が必要です。
公開していない場合は、潔く役所に行き都市計画図を購入しましょう。
チェック事項②:農地区分(農地ランク)と農用振興地域(青地か否か)
ややこしい話なのですが、農地にも区分が存在します。
もう少し分かりやすく言うと、「農地としてのランク」のようなものです。
ランクが高ければ高いほど、”その土地は農地として優良”と判断されます。
そして、「農地として優良」ということは、それだけ転用しづらいということです。
農地のランクに応じて、そもそも転用が難しかったり、添付書類が増えたりします。
スムーズに転用したいのであれば、転用予定地の農地区分を予め調べておいて、それを転用計画に組み込んでおくべきです。
農地区分は、転用予定地を管轄する農業委員会事務局に照会すれば教えてもらえます。
↓分かりやすく農地区分を表形式でまとめておきます↓
農地区分 | 特徴 | 許可可否の傾向(滋賀県) |
---|---|---|
第1種農地・第甲種農地 | 高い地力を持ち、大規模営農に適する | 原則不許可(例外極少) |
第2種農地 | 比較的条件の良い農地 | 条件付き許可 |
第3種農地 | 農業適性が低い | 原則許可 |
農用地区域内農地(青地) | 農業振興地域内で計画的に保全される農地 | 原則不許可 |
そして、更にややこしい話ですが、農地区分とは別に「農用振興地域」というものが存在します。
農地区分と農用振興地域は全くの別物だと思ってください。
転用予定地が「農用振興地域」(「青地」とも言います)に属する場合、転用は非常に厳しいものになります。
転用が不可能というわけではありませんが、よっぽどのことがない限り、転用の見込みはないと判断されます。
(上の表も参考にしてください)
農用振興地域は、転用予定地を管轄する役所の農政課に紹介すると教えてくれます。
※課の名称は役所により様々ですので、「農政課」ではないこともあります。
チェック事項③:その他の事項
他にも事前にチェックする事項はたくさんあります。
転用目的により注意するべき事項は異なりますが、おおむね次の内容はどんな場合でも確認します。
- 現地調査(農地の現況)
隣地との境界が存在するのか、排水用設備を備えているのか、接道の状況、搬入路や乗り入れ箇所など - 関係諸法令(農地法以外の規制法令)
国土利用計画法に基づく届出、開発許可申請、砂防法許可申請、河川法許可申請、景観条例に基づく届出など
※特に転用目的が再エネ事業の場合は、規制法令が多いので、注意が必要です。
転用目的や状況に応じて、調査事項がきまります。
事前調査を怠ると、後々手続きが必要になり、予定が大きく狂うことにもつながります。
まとめ

- 農地転用は「市街化区域:届出」「その他区域:許可」が原則
- 3条:権利移動、4条:自己転用、5条:他人への転用と整理できる
- 届出は短期間、許可は審査があり1〜2か月かかる
- 都市計画図・農用地区域の確認が最初のステップ
- 許可では周辺農地への影響や実現性も審査される
- 地目変更や開発許可など関連手続きも要注意
- ミスや不備で工期・契約に影響が出るリスクがある
- ケースごとに「届出か許可か」を誤らないことが肝心
農地転用は、事前の調査・農業委員会への事前の根回し・書類作成等、やることが多々あります。
スムーズに手続きを進め、転用を実現したいのであれば、専門家に相談することをお勧めします。
当事務所は農地転用を専門に行う行政書士事務所です。
これまでに数多くの農地転用申請を通してきました。
農地転用に関してお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください!
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